翌日。
俺が出勤したふりして、隠れてみていると、実井はものすごくふりふりのワンピースを着て、めかしこんで、家を出た。

靴に発信機をつけておいた。
俺は一度会社に顔を出すと、そのまま実井のあとを追った。

「なんで貴様までついてくるんだ」
「波多野先輩どこいくのかな〜って、気になって」
三好はけろりとしている。
昨夜のことを引きずっている様子もないので、有難いが、油断は禁物だ。
いや、引きずるとしたら俺のほうか・・・。掘られたんだし。

「実井さん、可愛いかっこしてますね。デートですかね」
「うるさい」
「あれっ、相手は女性みたいですよ。オンナノコだ・・・」
三好の言うとおり、実井と待ち合わせていたのは、女子だった。
やはり同じようなフリフリのワンピを着て、顔は見えない。
「ゴスロリ女子会ですかね?」
三好が身を乗り出している。

相手はてっきり例の大学生だと思っていた俺は、肩透かしを食らった感じだったが、これはこれで気になる。
「封筒を手渡した」
三好が囁いた。
ハンドバックから封筒を取り出した実井は、それをそっと相手に押しやった。
会話は遠くて聞こえない。くそ、盗聴器があれば・・・。

「金、ですかね」
三好が言った。金・・・。なんで実井が金を渡しているんだ。
まさか・・・。
「援助交際、とか?」
「なんでだよ。まさか」
おざなりになっているとはいえ、セックスに不自由させているとは思えない。
そもそも、おざなりになっているのは、実井のせいなのだし・・・。
まさか、俺とはやらずによそで・・・。

女は立ち上がると店を出る前に一瞬振り向いた。
「・・・あ!!」
俺は思わず小さく叫んだ。

女は、わぴこ・・・。みのるの、実の母親だったのだ。

「波多野さん・・・つけてきたんですか・・・?」
押し殺したような実井の声が、耳に届いた。
いつの間にか、実井が、目の前に立っていた。














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