「どこ行ってたんですか。波多野先輩」

事務所に戻ると、三好がいた。
「なんでもねーよ」
俺はじろりと三好を睨んで、自分の椅子に座った。

「不機嫌ですね。なにかありましたか?」
「質問攻めにするな」
「そうだ、今晩飲みに行きましょうよ」
俺は思わず三好の顔を見た。
「なんだ?お前が誘うなんて珍しいな」
「暑くなってきたし、ちょっと飲みたくて」
「俺は・・・」

みのるの顔が思い浮かんだ。同時に実井の顔も。
実井に纏わりつく、あの大学の友達も。

「行くか・・・」
「予約しときますね」
三好は携帯を取り出して、画面を操作し始めた。

居酒屋<のん兵衛>。
カウンターとテーブル席が3つあるだけの、小さな店だ。

あ〜飲みたい。あ〜酔いたい。

「飲みすぎですよ。波多野先輩」
「うるせ〜」
2時間もするころには、俺はすっかり出来上がっていた。
「いくら先輩が小さくても、おぶって帰るのはごめんです」
「小さい小さい言うな!」
「声だけはでかいんですよね」
三好はため息をついて、
「お茶漬けが来ましたよ。食べますか?」
「鮭・・・」
「鮭はもうないんですって。たらこですよ」
「鮭がいい・・・」
「わがままですね」

携帯の着信が鳴った。
「出なくていいんですか?」
「いいんだ・・・」
しばらく鳴っていたが、そのうちに切れた。
あいつは大学で友達とよろしくやっているんだ。こっちだって・・・。
「次、どうします?もう帰りますか?」
「ホテル、いこうぜ」
俺はぶちょう面のまま、三好を誘った。






















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