「長野に出向?・・・俺がですか?」

俺は思わず聞き返した。

「長野で起こってる連続殺人事件の捜査に、誰か寄越してくれと要請があったのだ。まあ、長くても3年くらいだろうな」
なんでもないことのように、結城さんは言った。

「ちょ、ちょっと待ってください」

「心配しなくても、実井と子供の面倒はこちらで見るから、安心しろ」
デスクに頬杖をついて、結城さんは言った。

「そんなこと・・・頼んでるわけじゃ・・・」
「別に構わん。三好が世話になったようだから、その礼もある」
冷ややかな結城さんの言葉に、胸がどきりとした。
三好・・・三好か・・・。
あの夜のせいで、俺は長野に飛ばされるのか・・・。
だが、実井とみのるを結城さんに任せていくのは不安以外のなにものでもない。
なんかされたら・・・気が狂いそうだ。
「どうした?不安そうだな」
「実井は・・・連れてゆきます・・・」
「残念だが、向こうは独身寮だ。妻帯は無理だ」
にべもなく、結城さんは言った。
「そんな・・・」

足元が崩れるような気分で、俺は結城さんを見つめた。
結城さんは一部の隙もない様子で、いつものようにデスクに座っている。
「わかりました」
諦めて、俺は言った。
「出発は来週だ。ああそれから、これは餞別だ。持ってゆけ」
結城さんが投げて寄越した袋には、なにか金属製の固いものが入っていた。
「なんです・・・これは・・・」
中を検めると・・・これは・・・。
「実井に頼まれてな。探しておいた。中世ドイツの貞操ベルトだ」
「貞操ベルト!?」
浮気できないように恋人に履かせたという鉄のパンツか。ちょうど大事な部分が鉄になっていて、他は皮のベルトになっている。痛そうだ。
「これ、冗談・・・ですよね・・・?」

「俺は冗談は好きじゃない。わざわざ探したんだから、ちゃんと装着するんだな」
結城さんはニヤリとした。












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