「波多野」

廊下で呼び止められて振り向くと、結城さんだった。
「はい」
D課を創設したのは、結城さんだ。
メンバーは今のところ俺と神永、甘利先輩と、三好の4人だ。
他のメンバーも探してはいるが、なかなか見つからない。

「・・・元気そうだな」
「は?」
一瞬、背筋がぞくりとした。
殺気、みたいなものを感じたのだ。
「・・・元気ならいい・・・」
そう呟いて、結城さんは立ち去った。

なんなんだ・・・。
結城さん・・・。

「波多野先輩。結城さん見ませんでしたか?」
三好がやってきた。
「ああ、外に出て行った」
「え?これから会議・・・」
三好は不思議そうだ。猫みたいな眼をまあるくした。
「結城さん、変じゃないか?」
「変って?至って普通ですよ」
三好はきょとんとする。
そうすると、童顔が一層幼くなる。
「貴様は、普通だな・・・」
俺との一夜など意味はないのだろう。
三好は至って普通だ。
まあ、そのほうが俺も助かるが・・・少し・・・。
「がっかりしました?意識して欲しいですか?」
三好はずるそうな顔になった。
「誘うなよ。貴様とは・・・なんでもないんだ」
「そんなこと言わずに、また今晩あたり、どうですか」
「貴様とはもう飲まないよ」
俺は三好の額をこつんと小突いた。

「いって〜・・・。そういえば、波多野先輩、俺になんかしました?」
「なんかしたのは貴様だろう」
「それなんですけど、途中から記憶が消えてるんですよね。飲みすぎたかな」
三好が朱い唇をとがらかせるのを、見つめていた。












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