「よお。本当に会えるとは思わなかった」

いつものバーで水割りを飲んでいると、真島が現れた。
俺は振り向きもせずに、
「別に貴様に会いに来たわけじゃない。ここは俺たちの場所だ」
そう牽制した。

「そうつんけんするなって。隣いいかな?」
「だめだ」
「そういわずに」
真島は嬉しそうに隣に座った。

「同じものを」
真島はそういって、胸ポケットから煙草を取り出した。

「まあ、再会を祝って乾杯といくか」
「誰がだ。貴様ひとりで飲め」
「ほら、そういうところ」
真島がニヤニヤとした。
どうせ、三好に似ているというのだろう。

「乾杯」

真島は勝手にグラスを当てると、水割りを飲んだ。
喉元はだらしなく開襟しており、そこから男らしい喉仏が覗いている。
胸元にはじゃらじゃらした、品のない金のネックレス。
こないだはネクタイをしていたが、今日はいかにもジゴロだ。
どこで焼いたものか、少し日焼けした肌も、いかにもそれらしい。
身体は・・・それなりに鍛えているのだろう、見れなくはない。

「なんだ、じろじろ見て」
「別に。品のないネックレスだ」
「褒めたのか?貢物だ」
「だろうな。いかにも品のない女から貰った感じだよ」
「・・・神永」
意外そうに、真島は尋ねた。
「それは嫉妬か?」
「なっ・・・」
俺はむっとして、答える気にもなれず、水割りを飲んだ。

「どうして俺に会いに来た」
「会いに来てない」
「嘘だ。あんたは俺を待ってた」
俺の腕を掴み、真島は言った。
「俺はプロだ。目を見れば、相手の気持ちくらいはわかる。・・・あんたは俺を待ってた。それだけは確かだ」

真島の唇が、俺の唇に重なった。
俺は、抵抗するのも忘れ、眼を見開いた。



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