翌朝。
寮に帰ると、三好が食堂にいた。

「ああ、神永。また朝帰りか」
「まぁね。野暮用」
「最近風紀がたるみきってるな。結城さんも夕べからいないしさ」
三好が意外なことを言う。
「結城さんが?」

「こないだ貴様が昼に帰ってきたときも。確かにいなかった」

真島から漂ってくる整髪料の薫り。
結城さんと同じ整髪料の匂いがした。

「どうした?神永。ずっこけて」
「ちょっとな・・・腰が抜けそうになった・・・」

結城さんと真島。
真島と結城さん。

バーで真島に会った時、俺は真島は優男の美男で、甘利に似てると思った。
でも、よく考えてみたら、真島はあんなに美男だっただろうか・・・。
ただのジゴロにしては鍛え抜かれた肉体をしていた。
それは、女にもてるための方便だと思ったのだが。

まさか・・・いや、そんなはずはない。
俺は身体を重ねてるんだ。
もし、彼が結城さんだったら、わからないはずはない・・・。

「どうした、真っ青だぞ」
三好が心配そうに眉をひそめる。
「いや、なんでもないんだ・・・本当に・・・大丈夫だから・・・」

偶然だ、偶然。偶然ってこともあるよな・・・。
俺は冷や汗をかいて、床にしゃがみこんだ。

愛してる。
真島の声が、耳元で揺れた。






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