「神永。おい」
ぺしぺし、と頬を叩かれて、俺は目を開けた。

「反応がないから、心配になった。そんなに悦かったかよ」

「ああ・・・ぶっとんだ」
麻薬みたいだ。快楽が強すぎて、手足が痺れている。
「ふ。正直だな」
真島はおかしかったらしく、笑いを噛み殺した。
「なぜ笑う」
「あんなに抵抗してたのに、俺を認めたからさ」

「ああ・・・認めるよ。あんたは確かにジゴロだ。どんな女も口説き落とす」
「男も、だろ?」
「・・・・・・」
俺は額に手をやった。
天井の巨大なプロペラが空気をかき回す。

「参考にするよ」
俺が何気なく言った言葉に、真島は反応した。
「おい、どういう意味だ。俺が教えたことを、他の誰かに試す気か?」
あまりの剣幕に押されて、俺は真島を見つめた。
「なにがいけない?そのつもりで俺に教えたんじゃないのか」
「馬鹿言え、俺は」
真島は口をつぐみ、言葉を探すような目つきをした。

「いや、いいよ。誰かと試せよ・・・どうせ、俺の言葉なんて信じないだろうし」
「なんだよ、言えよ」
もったいぶった言い回しにイラっとして、
「まさか、アイシテルとか言わないだろうな」
「・・・・・・」
真島は暗い目をした。

「言ったって、信じねーよ。どうせ俺は三好の代わりなんだろ?あんたは三好が好きなんだもんな・・・」
どうして、どいつもこいつも三好が好きなんだ。
三好なんて、ただのインランな猫だ。

「俺が三好の話をしたのは、君の気を惹くためだと言ったら?」
「真島」
「愛してる」

信じない。ジゴロのたわごとなんか。

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