ホテルの部屋で、目が覚めた。

身体がだるい。
慣れない痛みもある。

俺は昨日、バーで飲んで・・・それから、どうしたっけ。
誰かに誘われて、ホテルに来たんだっけ・・・。

「大丈夫か」
聞き覚えのある声だ。
水を差し出された。
「随分飲んでたから・・・ほら」
「あんたは・・・」
顔は見覚えがある。確か、うちのビルに出入りしていた講師のひとりだ。

「・・・真島だ。ひどいな。名前もでてこないのか?」
男は苦笑した。
ああ、そうだ、ジゴロの講師、真島だ。
少し崩れた感じのする、優男の美男だ。ただし、若くはない。
ちょっと、雰囲気が甘利に似ている・・・気がする。
人を誑す、その甘い雰囲気が。

「俺は・・・あんたと?」
「それも覚えてないのか・・・最悪だ」
「・・・悪い。なにも思い出せない」

だが、俺は裸だ。
なにもなかったわけではなさそうだ。

「あんたは自棄を起こしたみたいに飲んだくれていたんだよ。それで、有り金が尽きて出て行こうとしたとき、俺が引きとめたってわけさ」
「ああ・・・飲んでたのは覚えてるよ」
「見覚えのある顔だったから、もしやと思ったけど、やっぱり、神永、だったよな?」
「・・・狭い世間だ」
俺は水を飲んだ。
少し、冷静になって状況を整理しよう。

俺は田崎にふられて酔っ払った挙句に、真島とホテルで一夜を過ごした。

かっこ悪いことこの上ないが、真実はそんなところだ。


「はじめてにしては、悪くなかったよ」
真島が言った。


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