気がついたとき、実井の嘲るような顔が眼に映った。

身体を動かしてみて、あれ?と思う。普通に動く。
縛られているわけでもなく、ただ転がされていただけらしい。
ただ、下半身に違和感があった。
なんか、動きづらい。

「なんだこれ?」
見ると、下半身にベルトが巻かれていて、それが俺の大事な部分を隠していた。
ズボンの上から嵌められたそれは、鉄で出来ていて、昔なにかで見たことがある・・・

「貞操ベルトですよ。十字軍に行く若い兵士が恋人の貞操を護るために履かせた鉄のパンツです。なかなか泣かせますよね」
実井が解説した。

「なんでそんなものを俺が履いてるんだ!?」
「おや、身に覚えがないとでも?」
今度は、背後から田崎の声だ。
いつにもまして、皮肉な口調で、田崎は言った。
「君は非力だから自分で自分の身を護ることが出来ないだろうと思って、俺がつけてやったんだよ。なかなか似合ってるよ」
「ばっ・・・馬鹿言うな!外せ!早く!!」
「外したくても、鍵を無くしてしまった」
田崎は両手を広げて、軽く振ってみせた。

「ちなみにそれは瀬尾さんに特別にアレンジしてもらった、特注のベルトだから。性欲を感じて膨張すると、電流が流れるようになってて・・・まあ、そのときのお楽しみだね」
と実井が言った。
「電流って・・・股間にか!?おいっ、冗談だろ!!」
俺は実井に掴みかかった。
さっきは油断したが、本気でやりあえば五分五分の戦いができるはずだ。
田崎がいなければ、だが。

「俺の愛の深さがわかった?自分で言うのもなんだけど、嫉妬深いほうだから」
と実井が言った。
「たいがいにしろよ!本気で怒るぞ!」
「あんまり興奮しないほうがいいよ。ベルトが反応するといけないから」
「こんな状況で勃つわけねーだろ!!」

「勃たないのは、昨日やりまくったからだろう?甘利と」
田崎が言った。
「君が誘ったんだよね?波多野」
田崎の声は低くなった。








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