「三好が猫と寝ている」
波多野が言った。

「それはもう聞いたよ」
と甘利が答えた。
ふたりは波多野の部屋にいた。
波多野は盗聴器のヘッドホンをつけている。

「ただ寝ているんじゃない。猫とやってるんだ」
「はあ?なにいってんだお前、貸してみろ」
甘利はヘッドホンをとりあげて、自分の耳につけた。

熱い、喘ぎ声が漏れ聴こえてくる。
聞いているだけで、身体が反応してしまいそうなほど、艶やかなその声は、確かに三好の声だ。
甘利の顔は青ざめた。
「本当だ。三好の奴、猫とやってるのか・・・?」

「観に行こう」
立ち上がりかけた波多野の腕を、甘利が掴んだ。
「待て。もう少し聞いてみよう」
「甘利」
甘利の目が、ギラギラと輝いている。
ひっぱられて、波多野は甘利の腕の中に倒れこんだ。
「ちょ・・・なにするんだ!」

「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られてなんとやらってね。三好の邪魔をするよりも、こっちはこっちで愉しもうぜ」
「なっ・・・ば、馬鹿言うな!」
「わー、凄い色っぽい声。三好の声だけでご飯三杯いけるわ〜」
甘利はヘッドホンをかけたまま、波多野を抱きこんだ。

「ちょ、待て、落ち着け甘利っ・・・貴様、なにを考えてるんだっ・・・!!」
「お前の声も色っぽいな。もっとしゃべれよ、波多野。なんでもいいから」
「は・・・なせっ・・・くっ・・・あまりっ・・・」

甘利は波多野を壁に押し付けて、その唇を奪った。








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