「皆に怪しまれた」
部屋に帰ってから、猫に言うと、
<余計なことを言ったんだろう?>
と言う。
「まあね。猫は人間っぽいって言っておきましたよ」
<余計なことを>
「でも、貴方が佐久間さんだということは秘密ですよ」
<・・・・・・>
「どういう加減で猫になったんです?説明してくれませんか」
<武藤大佐の陰謀で、前線に送られたんだ。そうして、敵の返り討ちに遭い、俺は絶命した。と、思う。気がつけばここにいた。この身体になって>
「と、思う、ってなんです?」
<わからないんだ。・・・たぶん、死んだのだろう>
「佐久間さんが死んだなんて情報はありませんよ。きっと、助かったんでしょう」
僕の膝に、猫は乗ってきた。
「大胆ですね・・・貴方らしくない」
<猫なんだから構わないだろう?どうせ、なにもできやしない>
「ゆうべ、顔を舐めたでしょう?気がついていましたよ」
<・・・・・・>
「僕が猫と寝ていると、皆怪しんでますよ」
<何もしてないんだから、構わないだろう>
僕は、猫の背中を撫でた。猫は気持ち良さそうに目を閉じる。
「猫になったら、腹筋も割れていないんですね」
<腹筋の割れている猫なんているわけないだろうが。馬鹿馬鹿しい>
「この状況自体が、かなり馬鹿馬鹿しいと思いますけど」
僕はぼやいて、ため息を漏らした。