福本はなにもしなかった。
本当に協力者なのか?
それとも油断を誘っているのか・・・。

地下道を歩いていくと、鉄格子の外に外が見えた。
ここが出口なのか?
だが、鍵は見当たらない。

「おい!」
背中から急にどやされて、小田切は思わずピストルを取り落とした。
慌てて拾い上げようとしゃがむと、銃口が自分を狙っている。

「貴様は・・・」
「俺だよ」
闇の中から顔を出したのは、波多野だった。
「爆弾は持ってきたんだろうな?」
「爆弾?そんなものはなかった」
「そうか。おかしいな。見たところ、出口はこの一箇所だ」
波多野が顎で示した鉄格子は、確かに爆弾でもないと、壊れないだろう。

「爆弾はイルカが持ってるという偽情報が流れていたが、結城さんはああ見えて動物にはやさし過ぎる性格だ。イルカはないな、と俺は踏んだ。イルカでないとすると、あとは貴様が持ってくる以外にないじゃないか」


「俺はいつもお前のそばにある」
福本はそう、謎かけのような言葉を残した。
あれがヒントだとすると、爆弾は俺が身につけているのか?

小田切は、ピストルを拾うと、手のひらでピストルをバラバラに分解した。
なにもない。ただの銃だ。
福本はこうも言っていた。

「結城さんはこういっていた。爆弾が爆発しても、別に死にはしない。ただ腕くらいはもげるかもしれんがな、と・・・。」

「腕!」
時計だ!
小田切は慌てて時計を外して、鉄格子の外へ投げ捨てた。

「時間だ」
3時きっかり。
閃光が辺りを包んだ。
どおーーん!と激しい衝撃音がして、鉄格子が吹き飛んだ。

砂煙が上がった。
小田切が振り返ると、波多野は仰向けに倒れ、気絶していた。



「うまくいったな」
「ああ、小田切が優勝したんだろ?もちろん俺たちに奢るんだよな?」
「なんで俺が貴様らに奢らねばならん」
「なに言ってるんだよ。小田切を優勝させて、皆で賞金を分けようって計画だったんだぜ」
「そうそう、同じD機関員で本気でやりあえば、無事じゃすまないからな」
「そんなにあっさり俺たちがやられるわけないだろ?」
<銀座ライオン>で、ビールを片手に話に夢中になっているのはいつものメンバーだ。
「それじゃあ、ルール違反じゃないか」
と小田切が言うと、
「寝返るのは自由ってルールにあっただろう?僕たちは皆寝返ったんだよ」
と実井。
「僕は小田切に傷物にされた」
と三好。
「人聞きの悪いことをいうなよ。誤解されるだろう?」
と小田切。
「誤解なのか?」
と福本。

「とりあえず、無事に終わったってことで、乾杯!」
神永が音頭をとった。

















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