先に進むと、扉があった。
ノブを回すと、扉は開いた。
中から一気に白い煙が吹き上げる。

「なんだ・・・これは」
小田切は咳き込みながら、中へ進んだ。
できるだけ姿勢を低くして、床に這いつくばる。
匍匐前進だ。

ただの煙ならまだいいが、化学薬品かもしれない。
そう思っていると、
「誰だ、邪魔をするのは」
神永の声だ。

「神永、貴様か」
ドアを開けたせいで、煙はドアの外へと流れ出た。
部屋の様子がやっと見えるようになる。
驚いたことに、部屋の中には檻があった。
煙が流れ出たせいで、天井から日光が差し込み、眩しそうに眼を眇めているのは、田崎だった。
「俺が田崎を捕まえたんだ。貴様も檻に入れ」
二人は檻に入っていた。
神永が田崎を背中から抱きしめている。
田崎の様子は、一種廃人のような、自堕落な様子だった。

「・・・なにを・・・している」
「なにって?田崎に寝返るように口説いてたんだ」
口説く?
おそらく、自白剤かなにかを使ったに違いない。

「・・・イルカだ」
田崎は言った。
「爆弾は、イルカが持っている」

「おいおい、いけない口だな。そんなに簡単に機密をしゃべるのか?」
神永は田崎の唇を捕らえた。
「お仕置きをしないとだな」
神永が田崎の唇を奪うのを、小田切は呆然と見ていた。

演技、とは思えない。本気のキスだ。
だが、見惚れている場合じゃない、先を急がねば。
「邪魔したな・・・」
せいぜいそれだけ言い捨てると、小田切は次の扉を開いた。
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