「マッサージ、とても気持ちよかったよ。だから、背中をしてくれないか?」

不満そうな小田切を宥めるつもりで福本がそういうと、小田切は嬉しそうに頷いた。
ふわっと甘く清しい香りが湯煙に混じる。

「じゃあ、後ろをむいてくれるか」
小田切が言うので、福本は湯船の中に膝をつき、背を向けて縁に肘をついた。

小田切の熱い掌が、肩を揉む。
小田切はゆっくり、福本の鍛えられた筋肉の一つ一つをなぞるように、丁寧にマッサージしていった。
半身浴で汗が出てきて、身体から力が抜ける。その脱力感に身を任せていると、福本は下半身に何だか違和感を感じた。

「小田切?」
「大丈夫、気持ちよくしてやるから」
「え、・・・」

後ろから抱きつくようにマッサージをされていたから、気づくのが少し遅れた。
スルッと小田切の左手が福本の前に回り先ほど口に入れていたものを再び握る。
そして、その間に、右手は後ろの孔に、回っていた。
「おい!そこは・・・!」
福本が慌てて振り向くと、色気を湛えた小田切と目が合って思わず言葉を飲み込んだ。
「しーー。昼間だから、外に聞こえてしまう」
そう囁いて口付けをすると、小田切は福本の後ろに指をゆっくり差し入れた。
「んんーーー!」
呻く福本に、
「大丈夫、ゆっくり、気持ちよくしてやるから。今日は俺が全部してやるからな」

風呂場いっぱいに広がる花の香りに思考が停止しそうで、福本は焦って身を捩った。
痛くはない、痛くはないが、これは、だめだ!
小田切のことを愛しているから、好きなようにさせてやりたいが、それとこれとは話が別だ!

しかし、蕩けるような顔で、福本の身体を愛撫する純粋な小田切の行為を止めさせるのはどうにも躊躇われて、福本は未知の感覚にただ、耐えるしかなかった。








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