「間宮?」

「夢だと思っていた・・・。前世の記憶なんて・・・あるはずないって」
「覚えているんですね」
「D機関・・・いつか、結城さんが渚の前に現れるんじゃないかって、ずっと心配してた」
「なにいってるんだ・・・?お前まで、その話をするのか」
「夢だと思っていたんだ。夢にはいつも、お前が現れる・・・結城中佐とともに」
間宮は顔を覆った。

「三好さんはともかく、佐久間さんは別人みたいですね。髪型も、話し方も」
「俺は間宮宗太郎だ。佐久間じゃない・・・」
間宮は顔を上げた。
「でも、三好だけじゃなく、実井まで目の前にいる・・・あれは、夢じゃないんだな・・・俺の、前世なのか・・・」
「夢じゃありませんよ。僕らは一応、波多野を除いては揃いましたからね、結城さんのもとに」
実井は人差し指を立てた。
「車を待たせています。一緒に来てください」


「佐久間と一緒だったとはな」
「・・・結城さん・・・ですか?」
間宮は不審そうな顔をした。
「分からないのも無理はない、君たちの知っている俺は、50過ぎの老人だからな」
結城さんはにやりとした。
「俺はともかく、渚は記憶がないんです。放っといてやってもらえませんか」
「佐久間さん。それはあまりにも都合が良すぎるのでは?」
実井が口を挟んだ。
結城さんは、黙るように目配せをした。

「小田切も記憶をなくしていた。だが、徐々に取り戻しつつある。三好もまた」
「渚に手を出さないでください」
間宮は大きな声を出した。
「それはこっちのセリフだ」
結城さんはのんびりと答えた。
「だが、貴様の存在が、三好の記憶を取り戻すのに役立つというなら、しばらく様子をみてもいい」
なにを・・・言ってるんだ?
「間宮が僕にキスをしても・・・構わないというんですか?」
「構わん。それで、記憶が戻るのなら、いくらでも許すとしよう」
結城さんの言葉に、なぜかひどく傷ついた。







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