「鍵、掛けたはずですけど」

「スマホで開くタイプの鍵は、簡単に開くんですよ。レトロに変えたほうがいいですよ」
男はにこにこしながら、そういっていたが、
「あれ?そちらには見覚えがありますね」
間宮の顔を見た。
「誰?知らないけど」
「やっぱり、佐久間さんだ。少し若いけど」
男はやや驚いた顔で、
「三好さんと佐久間さんが揃うなんて、やっぱり因縁ですね」
と言った。

「なにいってるんだ、この人。誰なんだ」
間宮が僕を見る。
「結城さんの秘書」
「実井といいます。三好さんを見張っていました」
悪びれもなく、そういう。
「・・・僕を見張ってた?」
「結城さんのいいつけですよ、勿論」
実井はぽんぽんと手を叩いて、
「佐久間さんまで見つかるなんて、ついてるな。この調子で波多野さんも見つかるといいんですけどね、いえ、こっちの話で・・・」

「何者なんだ。勝手に人の部屋にあがりこんできて」
「だから、結城さんの秘書だって」
「貴方、なんなんですか?三好だの、佐久間だのってでたらめをいって、オレオレ詐欺ですか?聞けば、その結城とかって人、渚に乱暴を働いたそうじゃないですか」
「ええ。貴方と同様にね」
「俺はっ・・・」
「ポーズまで同じなんで思わず笑うところでしたよ。間宮くん、でしたっけ」
童顔だから若く見えるが、多少年上なのだろう。
実井は小馬鹿にしたような目つきで、僕らを見下した。

「三好さんはともかく、佐久間、間宮くんは記憶はないんですか?本当に?」
「あ、あるわけないじゃないですか・・・なあ、間宮」
僕が振り返ると、間宮は無言だった。

「お友達は違うみたいですよ。三好さん」
実井の声は皮肉に響いた。









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