大っ嫌いだ、あんな奴・・・。結城・・・。

「どうしたんだ渚?腹でも痛いのか」
「間宮」
次の日、大学の講義が終わると、間宮が話しかけてきた。
間宮宗太郎。僕の幼馴染だ。
友達の少ない僕には、唯一心の許せる友達だ。

「腹は痛くない。ちょっといろいろあって」
「フウン?学食行こう。相談に乗るよ」
間宮はそういって、僕の頭に手を置いた。

襲われたことは省いて、大体のあらましを説明すると、
「D機関?聞いたことないな。俺、歴史オタクだけど」
「知ってる」
間宮は日本史に詳しい。刀剣も集めている。
剣道部に所属し、日々木刀を振るっている。
「それに、前世だの、生まれ変わりだのって、あるはずないよ。死んだら終わりさ」
間宮はいって、ストローで炭焼きヴァニラシェイクをすすった。
「それって、苦いの?」
「飲む?」
差し出されたストローを銜えると、
「間接キスだな」
と間宮が言った。キス・・・。あのキスは既にトラウマだ。

「間宮、お前さ・・・キスってしたことある?」
「間接キス?」
「違う。普通の・・・っていうか・・・あの・・・おと・・・男と」
すると、間宮は見たことないくらい赤くなった。
「なんで・・・そんなこと聞くんだよ・・・俺に」
「間宮?」
あまりの動揺ぶりに、僕はむしろ驚いた。
「俺、もういかなきゃ・・・話は、また今度な。ちゃんと聞くから」
間宮は突然立ち上がり、鞄を持つと、また僕の頭に手を置こうとして、その手をふとためらうように引っ込めた。
そして、逃げるようにその場を去った。

なんなんだ・・・。
確かに僕は、聞いてはいけないことを聞いたのかもしれない。
でも、間宮が?
したことあるのだろうか・・・男と、キス。







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