総領司。
デスクにはそう名前があった。

「どこへいくんですか」
神永が席を立とうとしたので、そう尋ねると、
「俺は邪魔だろうから、ちょっと外しますよ」
「邪魔?」
「ふたりで話すことがあるだろうから」
神永は席を外した。


気まずい。
さっきから結城さんはひとこともしゃべらない。
黙って僕を見つめている。

「コーヒーでもどうだね」
「・・・え?ああ、はい。頂きます」

その会話を聞いていたかのように、扉が開いて、コーヒーが運ばれた。
秘書らしきその男は、小柄ながらも綺麗な顔立ちをしている。
結城さんは、男に耳打ちをした。
男は小さく頷いて、部屋を出た。
その様子を見ていて、なぜか心がざわめいた。
あの秘書と、一体どういう関係なんだ・・・。
そこまで考えて、僕ははっとした。
これって、まるで嫉妬じゃないか・・・!

「僕、失礼します」
「座りたまえ。まだ、コーヒーを飲んでない」
「でも」
結城さんは近づいてきて、僕を壁際に追いやった。

結城さんの顔がすぐそばにあり、僕の横に手を突いた。
これって・・・壁ドン・・・。

「君に思い出させる方法がひとつだけある」
「そ、それは・・・?」
「こうだ」
結城さんの唇が僕の唇に重なり、体液を吸った。

これって、き、キス・・・?僕は結城さんにキスされている・・・。
男にキスされた衝撃で、僕は目を見開いた。







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