調子が狂う。
いつもおちゃらけてる甘利が、真剣そのものだなんて。

「俺はお前のこと、仲間だと思っているよ」
「まだ口説いてないのに、もうふる気か?」
甘利は苦笑した。
俺は赤くなる。
「寂しいのは分かるけど・・・」
「お互い恋人もいなくて、手持ち無沙汰。おまけに一つ屋根の下でワインを飲んでる。口説かない理由はない」
「俺はお前より年上だし・・・」
「関係ないだろ」
「あるよ。敬ってくれ」
そうだ。
俺は年上だし、威厳を示さねば。

いつの間にか甘利が側にいて、俺を膝枕していた。
「敬うってこういうこと?」
「違う・・・」
慣れてるな。当然か・・・。
甘利がひとりでいるところなんて、想像すらできない。
俺は目を閉じる。甘利の視線を感じながら。
甘利の指が、唇の形をなぞった。

「悪戯はよせよ」
「気持ちいい」
隣の寝室が気になっている。
寝室にベッドはひとつ・・・。絡み合う自分たちの姿を想像してしまう。
俺は目を開けた。
「ひとつだけ言っとく。俺はねこだと思われてるが、実はたちなんだ」
「でも真島の時はねこだったんだろ?」
「それは例外なんだ。もし、貴様と寝ることがあっても、俺はたちだ」
「そうですか。俺は別にどっちでもいいよ。神永の好きなほうで」
拍子抜けしたみたいに、甘利が言った。
「どっちでもいい?お前って・・・だらしない奴だな」
「はぁ?譲歩してるだけでしょうが」
気分を害したらしく、甘利が苦い顔をした。
でも体格は甘利のほうが上だ。
甘利を抱く俺、想像できない・・・。

「ここでする?移動する?どっちでもいいよ」
ハンバーガーのテイクアウトみたいに、甘利が言った。







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