「そりゃ・・・いいけど。キャバクラでもいく?」
「はぁ?キャバクラ?ホストクラブオーナーの俺が、キャバクラなんか行くの?」
「いいじゃん。行こうぜ」
わざと明るく言って、神永は立ち上がった。
「福本は?どうする」
「・・・波多野を送っていくよ」
波多野は泥酔している。福本は吐息した。

キャバクラは閉まっていた。
「12時までか〜シンデレラだな。どうする?甘利」
「ここからだと俺の家が近い」
甘利はさっさと歩き始めた。

甘利の家は、都心の高層マンションの上のほうだった。
「いいとこ住んでるな。儲かってんの?」
「まあね。税金対策」
甘利はワインを開けた。グラスに注ぐ。

「俺、全然酔ってないよ」
「俺もだ。飲み足りないだろ。ハイ」
グラスを合わせる。
広いリビングの向こうに、夜景が見える。そして、その手前には寝室。

「景色も綺麗じゃん☆こんなところ女連れてきたら一発だよな」
「女は入れたことがないんだ」
「え・・・」
「男も誰も。お前が初めてだ。人を信用しないたちでね」
え?でも田崎は・・・。
「田崎と別れてから引っ越してきたから、まだ新しいんだ」
「なるほどね・・・それなのに、俺が泊まっていいの?」
「そう思ったから、連れてきたんだろうな」
「このワイン、うまいな。どこの?」
「ブルゴーニュ」
「おフランスか〜やっぱりな〜違うと思ったよ」
「神永。はしゃいでるな。わざとか?」
「え?」
「俺に、口説かせない為?」
確認するように尋ねた甘利の目は、真剣そのものだった。
神永は少したじろいで、

「そんな・・・考えすぎだよ。甘利・・・」
視線をそらした。










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