「乾杯!!」
神永が音頭を取って、D機関員の集いが始まった。

「いや〜、三好どころか、波多野まで見つかるなんてな〜良かった!!」
と神永。
「波多野、どうしてたんだ」
と甘利。
「引きこもってたから見つからなかったんだ。社会不適応者だ」
と田崎。
「違う。俺はハッカーだ。ありとあらゆる組織の情報をハッキングしてるんだ」
と波多野。
「それって儲かる?・・・そういえば小田切が来てないな」
と神永。
「小田切はまだ・・・あんまり思い出せてないんだ・・・ちょっと、うまくいかなくて。それに、国会議員秘書の仕事が忙しくて、ここにはこれない」
と福本。
舌を噛み切って死にそうな目にあっても、思い出さなかったのか・・・。
僕は感慨深い。
僕だって全てを思い出したわけじゃない・・・。
でも、こうして再会できたことは、喜ばしいことだ。

「三好、何を飲んでる」
結城さんだ。僕のグラスを取り上げた。
「君は未成年だろう。ソフトドリンクを飲みなさい」
僕は恨めしげに結城さんを見上げる。こないだは、僕の唇に口移しで酒を注ぎこんだくせに・・・。
そうして酩酊した僕を・・・。
「ほら、渚。ウーロン茶」
間宮だ。
「でも、未成年は俺たちだけみたいだな。なんで、俺たちだけ若いんだろう」
「それは、貴様らが死ぬのが遅かったからだ」
結城さんが言った。
死ぬ・・・。

そうだ、ここに集う生まれ変わったD機関員たち。皆、あの大戦のさなかに命を落としたのだ・・・。そう思うと不思議だった。
まるで今日ここに集っているのが、亡霊であるかのように。
そしてその亡霊たちを束ねるのが、魔王・結城中佐・・・。
魔王の力に引きずられて、僕らは墓場から甦ったのだろうか。
僕は結城さんを見た。
結城さんの影には、黒い翼のようなものがくっきりと映っていた。






inserted by FC2 system