雪が舞うキャンパスを早足で歩く。
雪。
ベルリンを思い出す。

「渚!待てよ!」
能天気な間宮が、追いかけてくる。
「待てって。なあ?なんか怒ってる?」

こいつ・・・覚えてないのか。ゆうべのこと。
ひょっとこのお面をつけた間宮は、僕に目隠しをして、そうして・・・。
強引に僕の中に入ってきた。

「覚えてないのか?ゆうべのこと」
「え?なにが?ゆうべお前の家に泊まったっけ」
間宮はきょとんとした。
「本気で覚えてないのか」
結城さん、記憶を消したな。
僕は夕べの出来事のせいで、歩くのも辛いくらいなのに。
「そういえばお前、今度の合コン行く?女子大の」
「いかねーよ」
「渚は女に冷たいな〜」
うるさい。
夕べは僕の中に断りもなく入ってきたくせに。合コンだと?
僕は氷点下の目つきで、間宮を睨んだ。

「誤解があるようですね」
背後から声がかかった。
傘をさしているのは、実井だ。
「誤解?」
「間宮君は最後までやってませんよ」
「え・・・」
「僕が見たときには、ひょっとこはベッド脇で気絶していましたからね」
実井はにやりとした。

あれは間宮じゃなかった。
結城さんの顔が思い浮かんだ。

「やっぱり・・・嫌いだ・・・結城さんなんて・・・」
僕は天を仰いだ。
天からは雪がぱやぱやと降ってくる。
雪は、全ての罪を隠すかのように、屋根屋根に降り積もってゆく・・・。








inserted by FC2 system