気がつくと、両手を頭の上でまとめられていた。僕は裸で、ベッドの上だった。

薄暗い部屋に、ライトが当たる。
福女のお面をつけた男が、そこに立っていた。

「さあさあお立会い。まずは私がお相手をしましょう。怖がらなくてもいいんですよ。貴方を天上に導いていく天女です。リラックスして」

身体は裸で、一枚の白い褌が、光に煌いた。
白いが筋肉のついた身体は、不似合いなほどに腹筋が割れていた。
声の調子から、実井だとわかる。
「よせ・・・なにをする・・・!」
福女は僕に猿ぐつわを噛ませた。頭の後ろで紐を結ぶ。
「すみません。こんなことはしたくないのですが・・・小田切は最中に舌を噛み切ろうとしたらしいんでね・・・これは聞いた話ですけど・・・記憶が戻らないと、思いつめるもんですね・・・」
福女は囁く。
「それに・・・こうすればキスができないでしょう?結城さんはあれでいて、かなり嫉妬深いんですよ。顔には出しませんけどね・・・」
「うう・・・」
話したくても声が出ない。
福女は僕にまたがると、両手で胸をもみ始めた。
敏感なところに触れるか触れないかのところで、快感が背筋を這い登る。
「うう・・・うう・・・ん・・・」
「お面を外せないから、唇が使えないんですよ・・・本当は舐めたり齧ったりしたいんですけどね・・・」
福女は、まるで僕が女であるかのように胸をもみしだき、それが済むと、僕の胸にほお擦りをした。堅い木の感触が、伝わってくる。
「なんてすべらかな肌・・・女のように・・・柔らかい・・・」

「いつまでしてるんだ。そろそろ代われ」
暗闇から声がした。
ライトが当たる。今度はひょっとこだ。身体はやはり裸で、白い褌がはためいている。
色の黒い、鍛え抜かれた身体には見覚えがある。・・・間宮だ。
ひょっとこのおどけたお面が、還って不気味だった。
「うう・・・うう・・・」
「せっかちですね。いいところなのに・・・まあ、仕方がない」
福女はブツブツ言って、身体をどけた。
ひょっとこは、僕の顔をいとおしそうになぞった。そうして、僕の上に乗ると、身体を丁寧に重ね合わせた。
褌の下にある堅いものが、僕のものに当たった。
「うう・・・うう・・・」
よせ、間宮。やめてくれ・・・。
これから始まる夜に、僕は恐怖した。










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