「おい、ちょっと待て、僕は貴様と星を観に行く気はない」
三好の手をひっぱり、外へ連れ出そうとすると、三好が言った。

「馬鹿だな。口実だよ。適当に時間を見計らって戻るんだ」
田崎は囁いた。

「三好。田崎をどこに連れて行くんだ」
小田切だ。
田崎は、
「ちょっとね。外に出てくる」
「連れションか?」
「・・・まあ、似たようなものだ」

「三好。ちょっと来い」
げげ。結城さんだ。
田崎は青ざめた。
三好は一瞬下を向いたが、田崎に向かって、
「行けよ。結城さんを待たすな」
背中を押した。

「なんですか」
結城さんの部屋だ。
なぜ、呼ばれたのだろう。
田崎は落ち着かずに、視線を彷徨わせた。
「どうした」
結城さんがそれに気づき、怪訝な顔をする。
「いえ・・・なにも・・・」

奥の部屋にはベッドがある。
それを意識しながら、田崎は拳を握り締めた。
「三好」
結城さんが田崎の顎を持ち上げた。
「ゆ、結城さん・・・離して下さい・・・」
「どうした。今日は変だな」

三好の役割を卒なくこなすこと・・・。それが、今取れる唯一の方法だ。
田崎は目を閉じて、結城さんのキスを待った。

「田崎とどこへいくつもりなんだ」
「え・・・」
そんなことを気にしていたのか。
田崎は目を開けた。
「・・・ちょっと・・・星を見に・・・」
「そんなに田崎と仲がいいとは知らなかった」

結城さんは、何かを考えるように、じっと眼を凝らしていた。






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