「金を貸して欲しい?なんだって急にまた・・・」
友達のジュードじいさんは、驚いて青い目を丸くした。
「マジマならともかく、真面目な君が言うんだから貸さないでもないが、一体どうしたんだね?」
「実は・・・」
借金を申し込む以上、本当のことを打ち明けるしかない。
俺は恥をしのんで、真島のことを話した。
ジュードじいさんは黙って頷きながら聞いていた。
「なるほど。そういうわけか。ラスベガスにマジマを探しに行きたいと、そういうわけなんだね?」
「そうです。必ず見つけて連れ戻します。金は、年末には返します」
俺は勢い込んで言った。
「なるほど。フウム・・・そうか・・・」
ジュードじいさんは、しばらく思案していたが、
「それじゃあ、こうするのはどうだね?ラスベガスには、わしも一緒に行く。そして、マジマを探すのを手伝おう。それなら、飛行機代もホテル代もわしが持つとしよう」
「え?」
意外な申し出に、一瞬言葉を失った。
「貴方もラスベガスに一緒に行くってことですか?」
「そうだ。わしもいっぺんでいいから、ベガスにはいってみたいと常々思っておったんだ。夢が叶うよ」
「で、でも・・・それじゃ、ご迷惑だし・・・」
ジュードじいさんは、齢80にはなろうというサンタクロースみたいなご老体だ。
それを連れて行くとなると、どちらかというと足手まといになりそうだ。
そう危惧していると、
「なあに、あんたの邪魔はしないさ。探すのに飽きたら、カジノの隅でスロットでもしているよ。わしも連れて行ってくれ」
ジュードじいさんは、そういって、片目を瞑って見せた。
本当のことを言うんじゃなかった。
そう後悔したが、遅い。
ラスベガス、という街の魔力は、このジュードじいさんをも虜にするくらい強烈なものらしい。
「旅は道連れ、というだろう?この街を出るのは新婚旅行でメキシコへ行って以来だからな。わしも楽しみだ」
「ジュードじいさん・・・遊びに行くんじゃないんですよ」
俺は情けない声で言った。
「わかっとる、わかっとる。そうと決まれば出立はいつだ?早いほうがいいな」
「一応店のこともあるので、早くても明後日になりますが・・・」
「明後日か!よしよし、わしもいろいろと準備をせねばな・・・婆さん!ちょっと来てくれ!」
台所から、婆さんが顔を出した。
「ちょっとな、明後日から旅行に行くから、必要なものを詰めてくれ」
「まあまあ、急にどうしたの?どこへいくの?」
「秘密じゃ。土産話を楽しみにしておれよ」
ジュードじいさんはにやりとした。