「隠し子は宗像?そんな馬鹿な」
秋元は僕の考えを一蹴した。

「だけどさっき・・・結城さんと重なって見えたんだ」
「顔が?・・・葛西、それって・・・」
前髪をかきあげながら、秋元は、
「君は頭がいい割に、人の感情には無知だね。さっきの宗像が結城さんと重なって見えたんだとしたら、それは嫉妬していたからだよ。嫉妬は緑色の目を持っているっていうだろ?怪物だったっけ」
「シェイクスピアか」
「結城さんは君を見ると、つい三好さんと重ねるんだろう。無意識に宗像に嫉妬してしまうんだろうな。君が似てると思ったのはその表情だよ」
「結城さんが・・・宗像に嫉妬?」
意外すぎてぴんとこない。
「俺は、隠し子がいるとしたら、むしろ君なんじゃないかと思うよ」
秋元は僕の頭を軽くぽんぽんした。
「子ども扱いするな」
振り払うと、
「結城さんは君には特に冷たいからね。実の息子だとばれないように、敢えてそうしてるのかもって気がするんだ」

確かに言われて見れば、僕に対しては特別冷たいような気がする。
賭けに乗じた思い切った告白も、鼻であしらわれた。

昨年の秋。

「好きなんです!僕と付き合ってください!」
「馬鹿か貴様」

あんな屈辱は生まれて初めてだ。
養子とはいえ、僕は料亭の次男として、大切に育てられた箱入り息子だ。
思い切り傷ついた。
だが、それも実の息子に対する愛情なのだとしたら・・・。

にわかに胸がざわざわしてきた。
実の父親について知りたい。
それは物心ついてからずっと、思い続けてきた、僕の願いでもあった。

「直接、確かめてくる」
僕は秋元の制止を振り払い、廊下に駆け出した。








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