正月が明けてしばらくすると、D機関内に妙な噂が流れた。
結城中佐には隠し子がいて、それがなんとD機関員の中にいるというのだ。
機関員たちを、妙な空気が包んだ。

福本「小田切、あの噂を聞いたか?」
小田切「ああ。隠し子だろう?穏やかじゃないな」
福本「結城さんのことだ。隠し子がいてもおかしくはないと思っていたが、それが俺たちの中にいるとなると、話は別だ」
小田切「一体誰なんだろうな・・・結城さんの隠し子・・・」

三好「何の話です?」
福本「三好。なんでもない」
三好「隠し子がどうとかって。一体何の話ですか」
小田切「なんでもないんだ。芸能人の隠し子騒動が多いなって話していただけだ」
三好「市川団十郎ですか?まあ、よくある話ですよね」

福本「三好は何も知らないみたいだな」
小田切「三好にはいえんだろう」
福本「案外三好かも知れんぞ。実際、よく似ているしな、あのふたりは」
小田切「おいおい、それはまずいだろう」
福本「なんでだ?」
小田切「なんでって・・・」
小田切は赤くなった。

宗像「聞いたか、葛西。俺たちの中に結城さんの隠し子が紛れているらしい」
葛西「隠し子?結城さん・・・僕というものがありながら・・・」
宗像「なにをいっている?」
葛西「それは一体誰なんだ?まさか三好じゃないだろうな」
宗像「三好さん?なんで?似てるか?」
葛西「明らかなエコヒイキだろ!!」
宗像「三好さんの前歴がわかれば見当もつくんだが、D機関員の過去は謎だからな。噂じゃ、孤児だって聞いたけど」
葛西「よくある噂だろ。そんなこといえば、実井だって、色町で育ったとかなんとか。小田切さんだって、親はいないそうだ。あくまで噂だけどな。本人に確かめたわけじゃないし」
宗像「皆過去は秘密にしてるからな・・・。怪しいのはその3人くらいか」
葛西「実井も結城さんにはべたべたしてるからな。小田切さんは、まあ、特に関係はなさそうだけど、敢えて隠してるのかもしれないし・・・」
宗像「本当はお前なんじゃないか?随分結城さんを気にしていたな」
葛西「僕?僕は・・・別にそういうわけじゃ・・・」
宗像「告白すると、俺にも親なんていないんだ。お前は?どうなんだ」
葛西「・・・規則違反だ。宗像」
葛西は力なく答えた。













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