部屋の明かりが消えると、窓の向こうに東京の夜景が広がった。

「綺麗だ」
見慣れてるはずの景色でも、ここから見ると違っている。
「葛西」
いつの間にか、宗像が背後に立っていた。
背中から抱きしめてくる。
微かに、さっき飲んだワインの香りが立ち上った。

宗像は、僕の首筋に唇を這わせた。
「くすぐったいよ」
「口を閉じてろよ」
僕が振り向くと、宗像の顔がそこにあった。

「僕をどうするつもりなんだ」
「葛西」
宗像はもう一度僕の名前を呼んだ。

「焦らすなよ。気が狂いそうなんだ」
僕の頬を挟み、目を覗き込んだ。
痛いくらいに真剣な顔。唇が近づいてくる。

僕に口付けたまま、宗像は僕を絨毯の上に押し倒した。
「もう逃がさない」

熱い、執拗なキスが続いた。
宗像の不器用な指が、僕の服を脱がそうと動いている。
「いい。自分でやる」
見かねて、僕は自分で服を脱いだ。
宗像は眩しそうに僕を眺め、
「白いな」
といった。僕は赤くなった。

宗像を誘導して、ベッドに移動した。流石に床は辛い。
部屋にはキングサイズのダブルベッドが、鎮座していた。

「いいのか?」
僕にまたがって、確認するように、宗像が囁いた。鼓動が伝わってくる。
「いいよ」
僕は囁き返した。

夜景が迫ってくるような、不思議な感覚の中で、僕は初めて宗像に抱かれた。
ふたりで、どこまでも堕ちていく気がした。
もう戻れない。








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