物が無くなる程度では動かなかったダニエルの心を変える様な出来事が起こった。

ある夜、寮に帰ると、なぜか部屋の鍵が開いていた。
不審に思って、ドアを開けたが、別に荒らされている形跡は無い。
念のために引き出しを開けたり、クローゼットを開けたりもしてみたが、異変は見つからなかった。
もし、無くなったものが細かいものだったりすれば気づかないこともあるだろう。
そう思っていると、ベッドの下から白いリボンが零れているのが見えた。
「なんだ」
引きずり出してみると、かなり大きな箱だった。ドレスでも入りそうだ。
見覚えはない。
カードがついていた。

親愛なるユウ・スナガ

須永勇。は僕の本名だ。
文字はタイプで打たれていて、裏にはなにも書いてない。

嫌な予感がした。

「なんだそれは」
いつの間にか背後にダニエルが立っていた。
気配が無かったので、ちょっと驚いた。
「僕宛だ。プレゼントらしい」
僕はカードを見せた。ダニエルはカードを裏返している。
「待て。爆弾かもしれない」
「まさか」
僕は否定して、包装を破った。
箱を開けると、中から出てきたのは、真っ黒の猫の死骸だった。
首を掻き切られている。
僕は驚いて、声が出なかった。

「それはどこにあったんだ」
ダニエルの声は冷静だった。
「べ・・・ベッドの下だ」
「本気の脅しだな・・・手も込んでるし、動物を使うなんて卑劣だ」
ダニエルの顔は見たことが無いほど険しかった。

「ユウ。すまなかった。今まで本気で君の言うことを取り合わなくて」
ダニエルは僕の肩に左手を置いた。
「いつものよくある嫌がらせで、そのうち止むだろうと踏んでいたんだ。見込み違いだったよ。俺を本気で怒らせる馬鹿がこのキャンパスにいるなんてね・・・」
「ダニエル?」

いつもの陽気なダニエルとは違う顔を見たようで、僕は意外な気がした。







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