身体がひどくだるい。
口の中は、鉄のような血の味がした。
魔王とのキスのせいだろう。
視界が急に開けた。
僕はなぜかベッドにいて、シーツは寝乱れた痕がある。
そして、僕は裸だった。
いつの間に眠ったのか、僕は眠っていたようだ。
だが、夕べ何があったのか。
キス以降の記憶は混濁している。
僕は誰かに抱かれていた。
あれは・・・田中?それとも新見だったのか。
思い出そうとすればするほど、記憶は曖昧になり、ぼやける。
僕は目を塞がれていた。
見ていたはずはないのだ。
なのに、僕は確かに感じていた。
結城さんではない、誰かの気配を。
あれは・・・幼い少女。
聡子。か。
聡子の目がじっと僕を見つめている。
ひどく哀しい、愁いを帯びた瞳。子供らしくない。
大人びたまなざしで。
だが、その唇は確かに、
「三好」
と動いた。
「お前は三好だ。葛西ではない」
聡子は言った。
「お前の身体は私のものだ」
指先が酷く痛んだ。
自分で噛んだあとが、青く腫れあがっていた。
あれは、夢ではないのか・・・。
悪夢の中の、戯れごとではなかったのだろうか。
醜く腫れた指を眺めながら、僕は言い知れぬ不安を感じた。