がちゃり。

身体を動かすと、奇妙な金属音がした。
はっとして、みると、両手首に手錠がそれぞれかけられて、ベッドの柵に固定されていた。
なんだこれは?
一瞬、夢の続きかと思い、瞬きをしたが違う、現実だ。

「気がついたようだな」
声がした。
聞き覚えのある声・・・田中、いや、そこにいるのは新見だった。

「なぜ・・・貴様がここにいる・・・」
「お前はD機関で嫌われているんだって?好きにしていいって田崎さんが言ってたよ。人前で失神するなんて、D機関には相応しくないってさ」
まさか。
田崎が僕を売ったというのか?
にわかには信じがたいが、この状況は他に説明がつかない。
田崎、つまり結城さんが僕を田中に売ったのか・・・。

「ショックか?前から思っていたが、お前はたぶん大学出の世間知らずのお坊ちゃんなんだろうな。この程度のことはよくあることなんだ」
新見は、にやにやと下卑た笑いを浮かべながら、僕の頬を撫ぜた。

僕が唾を吐きつけると、手の甲でそれを拭って、
「さすがに若いから威勢だけはいいようだな。だけどどんなに威勢が良くても、長続きはしなさそうだぜ?」
僕の前髪を鷲掴みにして、目の中を覗きこんだ。

「僕に・・・触るな・・・」
「やだね」
新見は僕の唇を奪うと、僕の身体をベッドに押さえつけ、シャツを引き裂いた。
「わかるか?俺はずっとこの日を夢見ていた」
「やめ・・・ろ・・・」
「お前は俺のものだ!」
覆いかぶさろうとする新見の腹部を、自由になる膝で思い切り蹴り上げた。
不意を突かれたのだろう、新見はあっと声を上げて、ベッドから転げ落ちた。

新見はそのまましばらく床に倒れていたが、しばらくするとむっくりと起き上がった。
そうして、徐に、僕の足を掴むと、ベッドの柵に手錠で固定した。
僕はまったく身動きが取れなくなった。

それから、新見は思い切り僕の頬をぶつと、今度は左手でベルトを外し始めた。
これから始まる物事について思い、僕は眩暈を覚えた。







inserted by FC2 system