再び眠りに落ち、目を覚ましたとき、指先には包帯が巻かれていた。

「誰だ」
人の気配を感じ、鋭く誰何すると、カーテンの陰から見覚えのある人物が顔を出した。
田崎・・・。
「俺だよ。どうした?怖い顔して」
「・・・なんで貴方がここにいるんだ。僕の部屋に・・・」
頭を抱えたくなる。
僕はそんなに信用がないのだろうか。
次から次へと監視がつくなんて。
しかも、僕は今裸だ。
田崎は、なんというか危険なフェロモンを纏った男で、僕はこの人が苦手だ。
秋元はなぜか懐いていて、時々手品を教えてもらっていたようだが。

「手当てが必要みたいだったからね。邪魔だった?裸のことなら俺は気にならないけど」
「貴方は気にならなくても僕は気になりますよ。一応人間ですからね。服を着ます」

田崎といるとテンポが狂う。相手のペースに飲まれそうになる。
僕はベッドから降り立ち、下着をつけ、シャツを羽織り、ズボンをはいた。田崎はそれを無感動に眺めていたが、なにもいわなかった。

「それで?なんですか」
「そうつんけんするなよ。可愛くないぞ」
田崎はからかうように言う。
「別に田崎先輩に可愛いっていってもらえなくても結構ですよ。もともとこういう性格なんですし」
「君は本当に三好に似てるね」
嫌なことを言う。
「髪型まで真似して。潜伏名まで同じ、真木克彦か」

「その名前はベルリンでは使いませんよ。ベルリンにいる時だけは、皆川と名乗っています。地方に行った時だけ、真木になるんです」

「あんまり結城さんを刺激しないほうがいい。あの人は、何を考えているのかわからないところがあるから」
「してませんよ、そんなこと」
「君がここにいること自体、三好には秘密なんだからね」
田崎は人差し指を立てた。

「そして君がここにいること自体、結城さんには刺激になるんだ」








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