「なんですか、話って」
木田が僕を隠すように前に立った。

「君にはないよ。小田切京介君にあるだけだ」
「俺も立ち会います」
二人はにらみ合った。
「・・・お茶でも入れるよ。どうぞ、あがって」
僕は仕方なく二人を家に招きいれた。
道路じゃ目立って仕方がない。警察官と友達がにらみ合いなんて、僕がなにかしたみたいじゃないか。


「お茶でいいですか?コーヒーもあります」
「コーヒーをくれ」
波多野が言った。
「俺も」
木田が対抗するように言った。
台所のテーブルについたふたりは、黙ってにらみ合っている。

「なんですか、話って」
僕が言った。
「友達の前じゃ話せないな。あとで・・・」
「俺の前で話せないことってなんですか?あんた、京介とどんな関係なんですか」
「俺はただ盗まれた自転車を届けただけだ」
しれっと波多野は答えた。
「そんなこといって、本当は京介のストーカーじゃないですか」
「ストーカー?」
僕が入れたコーヒーを飲んで、波多野は答えた。
「俺は警察官だ。ストーカーじゃない。むしろストーカーは君のほうじゃないのか」
「俺は京介の友達です」
「最近多いんだよ。友達のようなストーカーが。暴行事件も起こしている。たいてい顔見知りだ。気をつけるんだな、京介君」
波多野もよく言うよ。自分のことを棚にあげて・・・。
そう思っていると、
「顔が赤いな。熱があるのか?」
波多野が僕の額に掌を当てた。
「ちょっと・・・京介に触らないでください!」
木田が立ち上がる。
「熱があるな。どうして黙っていた?もう寝たほうがいい」
「ちょっと・・・」

木田の制止も聞かず、波多野は僕を抱え上げると、階段をあがっていった。





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