姉貴は12時前には帰って来た。

「待ってたの?京介くん」
「当たり前だろ?何時だと思ってるんだよ」
「いい雰囲気だったのに、波多野って人にタクシーに押し込まれちゃって・・・」
姉貴は残念そうだった。

波多野は約束を守ったわけだ。


「姉貴の合コンについていくなんて、ほんっとお前ってシスコンだよね」
自転車の前に座った木田が、呆れたように言った。
「うるさいな。わかってるよ」
後ろに乗りながら、木田の腰に手を回して、僕は答えた。

僕の自転車は盗まれたばかりで、木田に送ってもらっているのだ。
勿論二人乗りは違法になってしまったが、こんなところに警察官がいるはずもないし・・・。と、木田が急ブレーキを踏んだ。
「やばい。警察だ。降りろ」
慌てて飛び降りると、しりもちをつきそうになった。

「そこ!二人乗りはだめだろ。どこの学校?桜が丘か。名前は?」
青い制服を着て、制帽を被ったその男は、よく見ると波多野だった。
「小田切・・・です・・・」
「木田です」
「生徒手帳を見せろ」
ふたりの生徒手帳を眺めると、波多野は、
「嘘はついてないようだな。小田切・・・京介・・・と」
「あの、自転車を盗まれて、それでたまたま今日だけ・・・」
「自転車が盗まれた?警察には届けたか?」
「まだです。今朝、盗まれたのを発見したばかりで・・・」
「本当か?」
「嘘じゃありません。なんなら、お巡りさん、家まで来てもいいですよ」
僕がそういうと、木田が驚いて僕を非難するように見た。

「そこまで言うなら、君の家に行こう。パトカーに乗りなさい」
言われるままにパトカーに乗り、僕は木田と別れた。

「さっきの高校生とはどういう関係だ?」
パトカーに乗るなり、そう質問された。
「クラスメイトですよ」
「ただのクラスメイトには見えなかった」
波多野のセリフが嫉妬じみているのに驚いて、僕は沈黙した。



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