「未成年淫行で逮捕する」

波多野はそういいながら、間合いを詰めてきた。
木田は雰囲気に飲まれて、両手を軽く挙げて、降参のポーズをしている。
銃口をつきつけられれば、無理もない。
この平和な日本で、高校生に銃を突きつける警察官・・・。
僕は木田のことより、このことがあとで問題にならないかを心配した。

「俺らを見張ってたんですか?お巡りさん」
不服そうに、木田が言った。
波多野はそれには答えず、
「制服で寄り道は禁止だろう?」
「皆してますよ。俺ら女子じゃないし」
「今回は見逃すが、次に見つけたら学校に通報するからそのつもりで」
波多野は銃を降ろした。
木田はほっとしたように、鞄を拾うと、振り返らずに立ち去った。

僕も帰ろう。
そう思って、立ち去ろうとすると、波多野が腕を掴んだ。
「おい!逃げるな」
「えっ?僕は悪くないんで」
「僕は悪くない、だあ?」
波多野の顔はどす黒くなっている。嫉妬・・・。
「お前は実井の癖にスキがありすぎる。あんな奴にキスさせておいて、僕は悪くない、だと?ふざけるな!!」
凄い剣幕で僕を怒鳴った。
「だって、木田は友達だし・・・あれは不可抗力で・・・突然だったし・・・」
なんで言い訳をしなければならないんだろう。
僕と波多野こそ、なんでもないんじゃないか。
一回やっただけで・・・。
そう思うと腹も立ってきて、
「貴方こそ、一回やっただけで彼氏ヅラはやめてもらえませんか!?」
「なん・・・だと?」
「そうですよ、貴方は僕の彼氏でもなんでもないんじゃないですか?大体僕は実井じゃないし、言いがかりも大概にしてくださいよ!僕は失礼します!」
言いたいことだけ言ってしまうと、僕は鞄を抱えてダッシュした。

追ってくるかと思ったが、それはなかった。
本屋では人目がありすぎたのだろう。
それでも、追ってきてほしかった。
矛盾した心に引き裂かれそうになりながら、僕は走り続けた。



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