「合コン!?」

僕は大声を出した。齢22の大学生の姉貴が、合コンに行くと言ったからだ。
「だめだよそんな!危ないじゃないか!」
「大丈夫よ、今時合コンなんて普通よ。相手は社会人、それもお巡りさんだよ」
「それこそ危ないじゃないか!今時は警察官が一番危ないんだから!新聞読んでないの!?警察官が若い女性にセクハラ、暴行、逮捕って載ってる!!」
「大丈夫だって。そんなに心配なら、京介くん、ついてくる?」

姉貴は真面目な顔で言った。
「ついてくって・・・どうやって?」
「私の幼馴染ってことにしてさ、お化粧して、女装すれば大丈夫じゃない?京介くん、身体小さいし、女の人に見えるわよ。歳は誤魔化せばいいし。22ってことにして」
「でも僕、16だけど・・・」
「小学校の時、ほら、京介くん、お姫様の役やったじゃない?あれは似合ってたわよ」
「あれは・・・」
トラウマだ。小学校の時、たまたまお姫様役の子供が風邪で代役が必要だった。劇の監督をしていた僕が、たまたまセリフを覚えていたというだけの理由でお姫様をやらされたのだった。
休んだ女子には恨まれるし、王子役の少年には本気のキスをされるし、いい迷惑だった。
「あれは、子供の頃だから・・・」
「今でも時々女の子に間違われるじゃない。スカウトの名刺山ほど持ってるの知ってるわよ。女子高生だと思われて」
「それはそうだけど」
「服は貸してあげる。お化粧もしてあげるわ。一緒においでよ、それならいいでしょう?」
姉貴はずるそうな笑みを浮かべた。


「へ〜、恭子ちゃん、22歳なの?若く見えるね〜」
居酒屋に集った女子大生と警察官のコンパ。
警察官といっても、相手は私服なので、普通の人に見える。まだ若いこともあって、違和感はなかった。
ばれないよな・・・。16歳で、しかも男だってばれたら、大事だ。
姉貴はさっきから隣の男と親密そうに話している。とても気になる。
姉貴の合コンについてくるなんて、僕も相当なシスコンだよな・・・。
そう思っていると、隣の男の視線が僕に刺さった。
なんだろう、さっきからジロジロと。まさか、疑われているのか・・・?
先ほど自己紹介のときに、波多野と名乗ったその小柄な男は、下手をすると僕よりも小柄なんじゃないかと思う。そのせいか、妙に片意地を張っていて、視線は鋭い。
顔は、どっちかとういうと垂れ目に近いが、割合に整っていて、髪を真ん中でわけている。
顔つきから察するに、先輩に呼び出されて嫌々参加してる感じだな・・・。
そう思っていると、先ほどの男が僕にテキーラを差し出した。

「まあ、飲もうよ。恭子ちゃん」
グラスになみなみと注がれたテキーラは、金色に光っていた。






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