「おはよう、波多野。なに?ひどい顔だね」
実井が部屋の外で俺の顔をわざわざ覗き込んで言った。
ひどいってなんだ。

「眠れなくてな」
盗聴不足でな。
「それだけって感じじゃないよ?」
「うるさいぞ」
そう言って食堂へ行こうとすると、瀬尾がやってきた。

「波多野さ〜ん!」
ツルツルピカピカの笑顔だ。腹が立つ。貴様のせいで俺は・・・。
「昨日はありがとうございますぅ〜。すごく面白くて、僕、とめられなくて、寝不足ですぅ〜」
「・・・修理はどうなったんだよ!」
「してますよ〜。でも、波多野さんの機械もいじってました♪」
「設定変えてないだろうな」
「もちろんです〜。信用してください〜。昨日は、・・・中瀬さんの部屋を聞いてみたんですけどぉ・・・」
途中から一応声を潜めて瀬尾が喋るが、実井には筒抜けだ。
「なんだ?何かあったか?」
「それが・・・。あ!ここからは、ナ、イ、ショ、ですぅ〜」
「殺すぞ」
俺は本気で言ったが、瀬尾はこわいこわいと嬉しそうに逃げていった。

「盗聴器、貸したの?」
「まぁな」
「へぇ、それで、禁断症状ってわけ」
「そんなこと!・・・」
ないとは言い切れない。この寝不足の顔では説得力がない。
「ふぅん」
実井はやけに意味深な笑顔で食堂へ歩いていった。

今日は、よりによって休日だ。一日がひどく長い。いつもなら盗聴デーだと張り切るのに、あ、足りなかった部品を仕入れに行こうかな。そうだ、そうしよう。
それには瀬尾に見つからないようにしないと、またからかわれる。
そんなことを考えながら朝食を済ませ部屋に戻ろうとすると、実井に腕を掴まれた。
「なんだよ?」
「ねぇ、禁断症状を乗り切るいい方法を教えてあげるよ」
「なんだと!?」
部品を買ってきても取り付ける機械がないとさらに腹が立つと思い当たっていた俺には渡りに船だ!喜んで実井の部屋についていった。

「それで、どうするんだ?」
「うん、盗聴のことなんか思い出せないくらい頭を空っぽにすればいいんだよ」
「俺もそう思って仕事をしたんだが、2時間で終わっちまったんだ」
「そういうのじゃなくてさ」
実井はそういうと、俺の肩を押して、ベッドに押し倒した。
「まさか・・・」
「そうそのまさか。単純だし、すっきりするよ」
「や、だけど!すっきりするのは俺じゃなくて貴様じゃねーのか!?」
「ふふっ、正解」
「やめっ!うっ、んん!」

ズボンの上から強く握られると、寝不足でストレスだらけの身体はあっという間に反応してしまった。気まずくて顔をあげると、サディスティックな顔をした実井と目があった。
あ、もうだめだ。こうなった実井に敵うわけがない・・・。そして、こうなった実井の色気はただ事じゃない。なんだかんだと俺は身体を開いてしまうんだ。そしてそうなることを期待してしまうんだ。
俺は絶望しながらも、自分の欲望を悟られてなるものかと顔をそらした。

実井がズボンの前を開けて、手を滑り込ませてきた。少しひんやりする手が俺のものに直接触れる。足先に力が入って、背筋がゾクゾクと痺れた。
「あ、ふっ・・・ぅあ・・・」
緩急をつけて擦られる。朝から、俺、何されてるんだ。

そんな思いが一瞬頭をよぎったが、すぐに実井から与えられる快感しか考えられなくなった。
「あ、あ、あ、んんっ!」
いきたい、もう少し。でも、刺激は絶妙に弱くて、なかなかいくことができない。

いきたい!いきたい!
いれられても何でもいいからいきたい!!
そう思った瞬間、実井の手がすっと離れた。
「え?」
「あ、僕、用事を思い出しました。じゃ、これで。波多野さん頑張ってね」

ひどく綺麗な笑顔で実井はそういった。
くそっ!この鬼畜!


















































inserted by FC2 system