夕飯をかきこむ。

腹は一杯になるのに満たされなくて、何か他に食べるものはないかと台所を漁っていると、福本が覗き込んできた。
「足りないのか?ここには漬け物しかないが、食べるか?」
「お、ありがとな!」
俺はなるべく固そうなゴボウの漬け物を選び、長いまま齧りついた。
バリバリ噛んでいると若干イライラが治まったような気がした。
情けない。ほんの、3時間くらいの間にこの始末。
こんなんじゃ、長期に渡る潜入なんて出来やしない。
記憶でもなくさなきゃ、普通でいられないぞ!?などと考える。

仕事だ!仕事をすれば気が紛れるに違いない!
そう考えたが、今現在は大きな仕事は来ていない。
どれもすぐに調べがつくようなものばかりだ。
だが、仕事の段取りを考えていると軽く2時間は集中していた。やはり仕事だ!
スパイはもともと仕事中毒の変態なんだ。
スッキリしたところで風呂に入り寝ることにした。


・・・。
・・・・・・。
ガバッと布団をめくって起きる。
「なんだよ。眠れない・・・」
寝る前の盗聴器チェックがしたい。
瀬尾に貸した盗聴器、無事だろうか。
あいつ、設定をいじってないだろうな・・・。
説明した時、ニヤニヤしてて真面目に聞いてなかったし・・・。
「ああ!くそっ!」
俺は布団を頭まで被って、無理やり眠ってしまうことにした。
スパイたるもの、眠ることができなくてどうする!
しかし、眠らなくても平気な訓練を受けてはいても、すぐ眠る訓練はさすがに未経験だ。
俺はごろごろと動いては朝まで一睡もすることが出来なかった・・・。


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