部屋に戻る途中で、三好に捕まった。

「田崎。ちょっといいか・・・?」
心なしか高潮した頬。目をキラキラとさせている。
興奮しているのか?
田崎は訳が分からない。
三好は田崎の袖をひっぱり、自分の部屋に連れ込んだ。

「なんなんだ一体、皆して」
「聞きたいことがあるんだ・・・」
三好の真剣な顔が田崎に迫る。
「ちょっと、離れて」
田崎は思わず三好の肩に手を置いて、距離をとった。

「ああ、すまない。あのさ・・・コンテストのことなんだけど」
「コンテスト?」
「インランコンテストだ」
ああ、そのことか。三好は確か、最下位だったな・・・。
「僕が最下位っておかしくないか?神永よりも下なんだぞ?屈辱だ」
「それは・・・結城さんが決めたことだから」
あんなものを気にする者がいるとは思わなかった。
「それだよ、それ。どうやって決めたんだろう?なにか覚えてないか?」
「・・・なにも。椅子に座らされて、気づいたときは同じポーズだった」
「僕もだ。椅子に座ったことしか覚えていない。あんなもので、僕がインランじゃないなんて・・・」
「ちょっと待て。君、インランになりたいの?」
そう尋ねると、三好はかっと顔を赤くして、
「だって、結城さんはインランなほうが好きだろう?」
と答えた。
「何を言ってるんだ?結城さんは別に・・・」
「その証拠に貴様は結城さんのお気に入りじゃないか!」
三好は決め付けた。
田崎は唖然とする。お気に入りは三好のほうだ。
「僕・・・インランになりたいんだ・・・どうすればなれるのか、教えてくれ」
真剣に教えを請うそのまなざしが、小田切のそれと重なって、田崎はくらくらした。
「三好・・・落ち着け・・・自分が何を言ってるのかわかってるのか・・・」
「勿論わかってる。インランコンテスト一位の貴様に聞けば、どうすればいいかわかる筈だ・・・そうすれば結城さんだって・・・」

貴様はそれ以上結城さんに好かれる必要はないんだ。
田崎はそういいたかったが、その言葉を飲み込んだ。





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