田崎は食堂で新聞を読んでいた。
神永が来て、
「隣、いいか?」
「ああ」
隣に座った。

小田切が来た。やはり田崎の向かいに座った。
波多野が来る。やはり反対側の隣に座る。

「なんだ・・・?」
田崎は囲まれてしまった。
新聞も読みづらくなり、畳む。
「為替相場はどうだ」
神永が尋ねた。
「特に変化はないようだけれど・・・?」
田崎は新聞を神永に投げた。神永はそれを広げる。
「株でもやっているのか」
田崎が尋ねた。
「まあね・・・」
言葉を濁しながら、神永は丹念に新聞を読む。

「田崎、体調はどうだ」
小田切が尋ねた。
「え?・・・ああ、いいよ」
「そうか。それは良かった」
どういう意味だろう。
俺は体調の悪そうな顔をしているのか?
「今夜、出かけないか?」
小田切が真面目な顔で言う。
「いや、今夜は・・・」
小田切とふたりになるのはまずい。
折角甘利と仲直りしたばかりなのだ。

「田崎は俺と出かけるんだろ?」
神永が言った。
「そんな約束はした覚えがないが?」
「今すればいいじゃん」
「それなら俺も行く」
波多野が言った。

どうなってるんだ?田崎はまるで自分がミツバチを引き寄せる蜜になったような気がした。







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