「行くのか?」
神永が、ネクタイを締めなおして、上着を羽織るのを見て、俺は言った。
「ああ。たぶん、俺を待ってる」

俺は思わず神永の腕を掴んだ。
「なんだよ」
神永が俺を見る。
「行くな。朝まで一緒にいたい」
「真島・・・」
俺には神永が理解できなかった。
久しぶりに会えたというのに、もう出て行こうとする。
それもただ、仲間と飲むために。

「悪いけど行くよ。今日は俺のために皆集まってくれたんだ・・・」
「義理堅いのは分かるが、俺だって・・・」
「もう、することはしたし、いいだろ?またすぐに会える」
「嫌だ。もう一回したい」
「なにいって・・・」
神永の白い頬が赤くなった。

「もしかして怒ってるのか?中に出したから」
「・・・そういうことを口にするなよっ」
神永が俺の手をふりほどいた。
図星か。
「そんなことで恥ずかしがらなくてもいいだろう?今更・・・」
「そういう問題じゃない!」
神永は自分を抱くようにして、叫んだ。

「俺は女じゃないから、別にそんなことを気にしてるんじゃないんだ!」
「じゃあ、なにを拗ねているんだ」
わからなくて、冷静に尋ねてしまう。

「・・・わからないなら、もういい」
小さな声で突き放し、神永は部屋を出て行った。






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