「そっちこそ、どーゆーつもりだよ!人を勝手に・・・まだ帰りたくない!」
店を出たところで、田崎を羽交い絞めにしていた甘利は腕を緩めた。

「俺たち最近コミュニケーションが足りてないと思わないか?」
「・・・そんなことは、ない」
「俺は最近、お前がわからん」
「そんなの・・・知らないよ・・・」
「寮に帰りたくないんだろう?俺もだ。あそこは壁が薄いからな」
「そういう意味じゃ・・・」
田崎がかっと赤くなった。


「ふたりになれる場所に行こう。俺はお前とふたりになりたい」
甘利の真摯な口説きに、田崎はわずかにたじろいだ。
甘利はそれを見逃さずに、田崎の腰を掴んだ。
「甘利・・・ここじゃ、人が来る・・・」
「構うものか」
甘利は、田崎の顔に顔を近づけると、唇を重ねた。


「ここだって、壁の薄さは変わらないじゃないか」

「ここなら、盗聴もないし、お前の声を聞かせたくない仲間もいない」
田崎を連れ込んだ安宿で、甘利は田崎を抱きしめた。
「盗聴されてたって、平気でするくせに」
「お前だって、嫌そうには見えなかった」
「嫌だけど・・・我慢してたんだよ」
「嘘つきだな・・・本当にお前は・・・」
甘利は手際よく田崎の服を脱がしていく。

「・・・甘利も・・・脱げよ・・・」
「田崎・・・あんまり照れるな・・・」
田崎は甘利のシャツのボタンを外し、ベルトを緩めた。
「自分ばっかり・・・ずるいんだよ・・・」
「ずるい?俺が?」
「いつも俺を・・・そうやって身体で繋ぎとめようとするだろ・・・」

「俺はただ」
甘利は自分でシャツを脱ぐと、後ろに放り投げた。
「お前を気持ちよくしてやりたいだけだ」
甘利は背後から、田崎自身に手を伸ばした。

「卑怯者・・・っ」
無防備な自分自身を掴まれたまま、田崎は悔しそうに呻いた。


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