「仲がいいんだな」

神永を残して、他のメンバーは次の店へ流れた。
俺は、汚れた皿を洗いながら、神永に話しかけた。

「まあ、仲間だからね・・・」
「仲間。それだけか?」
水切り籠に皿を入れると、俺は手を拭いて、皿を拭き始めた。

「それだけだよ」
神永がむっとした顔で、俺を睨んだ。
「ほかになにがあるっていうんだ・・・」

「別に、仲が好くて結構だ」
皿を片付けて、俺は再び煙草を銜えた。

「さっきのあいつ、お前をフッた男だろう?男前だな」
「え?・・・ああ、田崎か」
神永は微妙な顔をした。
「見せ付けるようにお前の肩を抱いていたが・・・」
「気のせいだろう?俺たちのことは知るわけがない」
「どうかな」
話さなくても目を見れば分かる。そういうものだ。
俺たちの間の空気を、読み取るくらいわけないだろう。
「田崎に嫉妬しているのか?」
「田崎にってわけじゃない。さっきいたメンバー全員に嫉妬している」
「本当か?」
神永は呆れたように、
「そんなんじゃ、もたないぞ」
と言った。

「どうしてお前の学校は男前ばかりなんだ?」
「え?そうか・・・?そういうわけじゃないと思うが」
「結城さんの趣味か」
「いや・・・どうだろう」
神永は曖昧に答えた。

「あんたこそ・・・三好ばかり見てたな」
「俺が?」
「まだ好きなんだろ」
ぶすっとして、神永が言った。
「俺の気持ちは知っているはずだ」
俺は言った。
カラン。水割りの氷が、音を立てた。

俺は神永の唇を奪った。




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