「やっぱり・・・そういうことか」

神永が言った。
そして、松葉杖をついて、店を出て行こうとする。

「待てよ!」
俺はカウンターを走り出て、神永を捕まえた。
「三好はただ飲みに来ただけだ、何も疚しいところはない」
「どうだか」

「僕を巻き込むなよ」
三好は酒を飲み干すと、代金をカウンターに置いて、席を立った。
「痴話げんかはふたりでどうぞ」
茶化すように囁くと、店を出て行った。

「少し落ち着け・・・とりあえず、座れよ」
強引に神永をカウンターに座らせる。
「ビールでいいか?」
「ああ。なんでも」
ビールをついで、神永の前に置いた。

「久しぶりだな・・・足の具合はどうだ」
「悪くない。もうすぐ、松葉杖もいらなくなる」
「そうか。待ち遠しいな」
「三好とは・・・何を話したんだ」
「なにって・・・世間話だよ。たいしたことは・・・お前のこととか」
「俺の?」

「三好が、お前が別の店で飲んでるっていうから・・・心配してた」
「心配?なにを」
「なにってそりゃ・・・」
俺が言葉を濁すと、
「信じてないんだな、俺のこと」
神永が言う。
「そう悪く取るなよ。少し、気になっただけだ・・・お前だって、三好と少し話しただけで、焼きもちを焼いただろう」
「あれはっ・・・ふたりきりでいたから・・・それで・・・」
「一緒に来れば良かったじゃないか。どうしてそうしなかったんだ」
「怖いんだ」
神永は、頭を抱えるようにして、カウンターに突っ伏した。

「頭の中があんたで一杯になって・・・ぐちゃぐちゃになるのが」






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