連れて行かれたのは、応接間だった。

ソファとテーブルのセットがあり、花瓶に花が生けてある。
結城さんはカーテンを閉めると、
「どうだ?」
と尋ねた。

「か・・・身体目当てなんですか・・・?」
僕は変なことを聞いてしまった。
だが、他にいいようもなくて、口ごもる。
どうしよう、酷く恥ずかしい。顔から火が出る。

「身体目当て?」
結城さんは意外そうに目を丸くし、それから、真面目な顔で、
「身体だけでは足りないが・・・」
と答えた。

「僕は・・・男です・・・」
「三好」
結城さんの手が頬に触れた。
親指で、熱いものを払う。
僕は、泣いていた。

「毎回貴様を口説くのは面倒だ」
「毎回?」
どういう意味だ。さっきのキスといい・・・まさか。
「僕は貴方と・・・寝たことがあるんですか・・・?」

「何度もな。そのたびに貴様は、自分は男だの、プライドがどうだのと、だだをこねる。まあ、それが可愛いといえば可愛いのだが」
「では・・・では貴方は・・・まさか・・・」

「そんな顔をするな。余計な感情は任務の邪魔だ。貴様が覚えていないほうが、俺にとっては都合がいい」

僕は何度も結城さんと身体を重ね、そのたびに記憶を奪われていたのだ。
あまりのことに、言葉を失い、僕はほとんど失神しそうになった。

「どうして・・・」

「昔、死んだ恋人は、三好。貴様に似ていた」
結城さんの頬の線が、孤独に浮かび上がった。
「俺を愛するものは、皆死ぬ。ジンクスみたいなものだ」



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