神永が立ち去った後、結城さんは鳩小屋を閉めて、屋上から階下に通じるドアを開けた。
僕も後に続いた。

がちゃり。
ドアに鍵をかける。
振り向くと、結城さんの顔が近かった。

え?
そう思う間もなく、キスされた。
それが、あまりにも自然だったため、僕は驚くのも忘れて、キスを受け入れていた。

少しあとずさると、背中にドアが当たった。
結城さんからのキス。
それはずっと、夢見ていたことだ・・・。
はじめての・・・。

はじめて?
少し違和感がある。
鋭い舌が、歯列を割って僕の舌に絡みつく。
このキス・・・覚えがある・・・。
以前にも、キスされたことがあった・・・?
そんな馬鹿な。

「・・・はぁっ・・・はぁ・・・」
呼吸が乱れる。
苦しくて、唇をずらすと、結城さんはそのままキスを鎖骨に落とした。

結城さんは杖を捨てて、右手で器用にボタンを外し始めた。
「ま、待ってください・・・こんなところで・・・誰かに見られたら・・・」
神永が戻ってくることもありうる。
それに、これ以上は・・・考えるのも恐ろしかった。

「貴様、俺を拒むか?」
面白そうに、結城さんが尋ねた。
「こんなところでは嫌です・・・」
「・・・問題は、場所か」
「いえ」
僕は赤くなった。

「ついて来い」
結城さんは杖を拾うと、さっさと歩き出した。





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