「神永。鳩を捕まえてください」

三好が言った。
俺が捕まえようとすると、鳩はばさばさと飛び立ち、空に舞い上がった。

「あー・・・逃げちゃった。どうします?」
「じきに戻ってくる」
結城さんは答えた。

ここの鳩は、どういう調教をしているのか、結城さんのいいなりになる。
俺たちもまた、鳩と同じか。

「・・・空が、青いですね」
三好が言った。

空は青く澄み切っていた。
この同じ空の下に、田崎も甘利もいるんだろう。
たとえ、遠く離れていても。

俺も早く、赴任地が決まるといい。
仕事さえしていれば、ひたひたと押し寄せてくる孤独感は癒えるだろう。
より大きな孤独によって。俺の孤独は癒される。
それは、ホンモノの孤独・・・。

「僕らも、鳩と同じですね」
三好が言った。
俺は思わず三好を見た。さっき考えていたことだ。

「どこへ飛んでいっても、絶対に戻ってくるでしょう?」
ああ、そういう意味か。

確かに。俺たちは、死なない限り戻ってくる。
結城さんの元に。
そして、死ぬことは、結城さんに対する最大の裏切りなのだ。

さきほど飛んでいった鳩が、再び舞い戻って、結城さんの肩に停まった。
戻れる場所がある。
それが、孤独な俺たちにとって、どんなに幸福なことだろう。

「やっぱり、結城さんに懐くんだから。ずるいや」
三好が穏やかに笑った。





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