えらいめにあった・・・瀬尾はあの録音盤を誰にも見つけられないよう、巧妙に隠していた。家捜しをする実井が苦戦するのをみて、ホッとしていたのに・・・。

「瀬尾さん、何か大事なものを隠しているんでしょう?僕にも見せてください」
実井のその一言で、あっさり取り出しやがった!しかも三好のまで!

俺は、そのあと実井と三好にとんでもない目に遭わされ、その騒動を聞きつけた結城さんにさらにとんでもない目に遭わされた。
死ぬかと思った。いや、死んだほうが楽だったかもしれない・・・。
瀬尾は実井に付きまとい続け、結城さんが知るところとなった。

結城さんと実井に誘われた瀬尾は、D機関を影でサポートする研究班に所属することになった。
俺たちが使う武器や道具を開発したり改良したりする班だ。正直、これ以上の適任はいないと思う。技術や創造力もさることながら、今や瀬尾は完璧に実井の犬だ。
燃やす必要さえない。自ら飛んで火に入ったんだ。


部屋でぐったりしていると、ノックの音。
「誰?」
「波多野さん、俺です」
「どーぞ」
瀬尾が入ってきた。沈んだ顔。
「どうしたよ?瀬尾」
もう身内だから、さん付けは無しだ。

「波多野さん、あの・・・波多野さんは・・・」
「なんだよ?」
「実井さんとそういう関係なんですか!?」
「え!?あ、いやっその!」
そういう関係ってどういう関係!?
うろたえながらも否定しようとするけれど、なぜか否定しきれない。
なんでだ俺!

「ごまかさないでください!俺、わかります」
ななななにを?実井との何を?
俺の頭の中には、実井に襲われたときの映像が甦ってきて、らしくもなくパニックになった。実井とのナニを!?

「やっぱり・・・。いいんです。大丈夫です。波多野さんなら実井さんを幸せにしてくれると思いますから・・・。二人ならお似合いです。俺なんかより・・・」
あ、またなんか妄想してるぞ!
「でも、」
瀬尾はこれまで見せたことない、ぞくっとするような色気のある顔で俺を見た。
俺は目をそらすこともできず、身動きもできず、次の言葉を待つしかなかった。


「実井さんを裏切るようなことがあったら、俺が許しませんよ」

ああ、あのサディスト実井に、この忠実なしもべ・・・。
俺のほんわかしたオトモダチは、すっかり実井の色に染まっていた。











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