今日は実井の部屋に盗聴器を仕掛けたぞ!
しかも、超高性能!
おかげでいつもならつけられない洋服の中に盗聴器を仕掛けられた。
しかし、この盗聴器なら、服がクローゼットの中にあったって聴こえるんだぜ!
俺は早速盗聴を開始した。

実井はなかなかの曲者だ。
前に仕掛けた大量の盗聴器はすぐに見つけたし、なんかいつも俺は負かされてしまう。
が、今回は自信ありだぜ!
ヘッドフォンから聴こえる音に集中して微調整を繰り返す。
「ガサッ」
あ、聴こえた!ここだな!
「ふっふっふっ、実井、お前の恥ずかしい正体をさらすがいい!」
すると、やがてヘッドフォンから声が聞こえてきた。

「や、やめて・・・、あ、やめないで・・・」
おっとっと!いきなりかよ!
「ああん!そ、そこは、触らないでください・・・」
え!?誰?誰がいるの!?
ヘッドフォンからは、実井の悩ましげな声が延々聴こえてくる。
「ちっ、実井、誰といるんだよ!」
俺は興奮しつつも、相手が誰だか気になって仕方がない。
こんなに、色っぽい声が生で聞ける相手にかなりイラつく。いや、別に実井が好きとかそういうんじゃないぞ?
俺はわからないことにイラついているだけなんだ。
実井の声は更に熱を持って、だんだん喘ぎ声が入り混じるようになってきた。

「ちょっ!うわ、やばい、色っぽい。なんだよ!誰だよ!くそっ!相手の奴、ゆるさんっ!」
俺はブツブツと苛立ちを吐き出した。
実井、名前を言え!と念を送ったが、実井は相手の名前をなかなか言わない。
それどころか、もっと声は激しくなっていく・・・。

「くそっ!しねっ!タコっ!実井は俺のだぞ!」
ついつい涙声で叫んだ、
いや、好きとかそういうんじゃないぞ?
そうしたら、いきなりヘッドフォンからの声がやんだ。
「?」
耳を澄ますと、くっくっくっと笑いをこらえているような声・・・。

「あはっ!あはははっ!」
「え!?」
「波多野さん、僕はあなたのじゃないですよ〜」
「え!」
俺はあわてて後ろを振り向いたが、誰もいない。
声は確かにヘッドフォンからだ。
「波多野さん、盗聴器を仕掛けるのは自分だけだと思わないでくださいね」
「な、!」
盗聴返しか!
どこだ!どこだ!部屋を探すとすんなりと盗聴器が見つかった。

「僕の部屋にしかけることに夢中で、自分が盗聴されると思わなかったなんて・・・波多野さん、かわいいですね〜」
実井!むかつくっ!
「いっ、いつからだよ!」
「はぁ?最初からに決まってるじゃないですか」
「じゃ、じゃあ、あの声は!」
「全部演技です。波多野さん、独り言多くてウケます」
「ずっと聴いてたのか!?」
「はい、もちろん録音もしてますよ」
「な!」
「実井は俺のだぞ〜(泣)」
あぁ、もう最悪だ・・・

俺は誰もいない部屋で、真っ赤な顔を手で覆った。

























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