尋問は8時間を超えていた。
学生たちが見守る中、三好は自白剤を打たれ、朦朧とした意識の中で、苦しそうに呻いた。

「首謀者は誰だ?」

冷徹な、いっぺんの感情もない声。
「・・・・・・」
鞭がとんだ。手錠で壁と繋がれて、半裸に剥かれた三好の身体は、容赦ない痣が刻み込まれている。

「もう一度聞く。首謀者は誰だ」

男は顎を持ち上げて、再び尋ねた。

「・・・・き・・・」
「なに?聞こえんぞ」
「・・・ゆうき・・・さんが・・・」
学生たちはざわめいた。

「・・・すき・・・」

がくんと、頭を垂れて、三好は3度目の失神をした。


「・・・随分色っぽかったよな・・・三好の奴」

娯楽室で、煙草を銜えながら田崎が言った。

「不謹慎な物言いはよせ。俺は三好が死ぬんじゃないかとひやひやした」
と小田切が嗜めた。
「意識の多層化に失敗するなんて、奴らしくないじゃないか」
と福本。
「結城さんが好き、だもんな。さすがの結城さんもあれ以上の尋問はできなかった」
と神永。
「どうした実井。さっきから黙りこくって」

「なんでもないですよ。ちょっと気になることがあって」
「気になること?」
「波多野、見ませんでしたか?」
「奴に用事か」
神永が鋭く言った。

あれ以来、あの最初で最期の一夜以来、神永は実井に対してもどかしい気持ちを抱いたままでいる。だが、この程度のハプニングで動揺していては、とてもスパイなど勤まらないだろう。
スパイとは非情。なにものにもとらわれてはいけない・・・。
そう学んだばかりだ。

「奴なら、部屋にいるよ」

神永は試すように言った。
「きっと、貴様を待ってる」

実井が一瞬、うざったそうな目をしたのは、気のせいだろうか。
貴様と寝たのは失敗だった。
その目はそう語っている気がした。






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